頼朝の決起は、この潜勢力を関東の大地に炸裂させたのである。それまで、なんとか自分の土地を守ってゆくことに汲々としていた武士たちが、この決起を境にして、すさまじい求心力とともに動きはじめたのだ!
頼朝と最初に立ち上がった40騎は、もう人生どん詰まっててどうにもならんみたいな人々であったとのことである。失うものなど何もない人間のヤケクソというのは、まことに強力なものである。このヤケクソが関東全体を動かし、さらには日本列島中を動かしたというのはまさしく無限のロマンというほかない。
武士なのよ!武士の世はもうそこまで来てるのよ、みたいな!確かに、俺達はど田舎のサムライにすぎんかもしれん。だが、坂東のサムライには坂東のサムライの意地があるのだと、彼らは思ったに違いない。
負けたらどうなる。逆賊である。でももし、勝ったらどうなるね。そりゃまあ、新勢力でしょうね。では、さらに勝ち続けたらどうなるというのか。そん時は君、もはや官職もらっただけで喜んでるわけにはゆくまい。幕府だよ、バ・ク・フ……!
……と彼らが思ったかどうかはさておき、頼朝は最終的に、征夷大将軍というレジェンダリーな称号にまで辿りついたのである。
この『イデアの昼と夜』も、三年続けているが何かが動く気配は、ピクリともないのである。あと数十年粘ったとしても、がんばったで賞くらいしかもらえないんじゃないかと思うと、もはや激おこぷんぷん丸を通り越して鬱病である。いやもちろん、いちキリスト者としては、どこまでもへり下る気持ちが何よりも大切なことは言うまでもないのであるが。
いやしかしだ。俺はやはり、俺なりの仕方で征夷大将軍になりたい。いや何も、世間からそう思われなくてもいい、走り続けた自分とこの広大な天空だけにはわかる、そんな征夷大将軍にだ。もはや何を言ってるのか自分でもわからんのだが、俺はやはりこの命を賭けて、俺自身のKAMAKURAを探し求めねばならぬ……。