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イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、キリスト者としてブログを書いています。

もう一匹の猫、ウィル   ーダークサイドとトマス・ホッブズの教え

猫の哲学 ウィルとももたろうくん 哲学 日常
 
 ところで、わが家にはもう一匹の猫がいます。年季の入った13才のオス猫で、ウィルといいます。ただ、彼の性格にはとても難しいところがあるので、なかなか扱いにくいところがあるのですが……。今日の記事では、このウィルについて紹介したいと思います。
 
 
 ウィルは、山形県の県道沿いにダンボール箱で放置されていた捨て猫でした。親戚の女の子が小学校からの帰宅中に拾ってきたのですが、案の定、家のなかでは「そんなもの飼えません!」という大騒動が持ちあがり、紆余曲折を経て、わが家にやってくることが決定しました。
 
 
 
グッド・ウィル・ハンティング 猫
 
 
 
 当初は予防注射や新幹線代などでたくさんのお金がかかったので、「五万」という、本人にとってはまことに屈辱的な名前がついていたのですが、山形から運ばれてきてわが家に到着した時点で、すぐに改名することが決定します。彼には、ロビン・ウィリアムズマット・デイモンベン・アフレックが出演する映画『グッド・ウィル・ハンティング』にちなんで、ウィルという名前が与えられました。
 
 
 けれども、ウィルは映画のなかのウィル・ハンティングと同じく、あまりにも不器用な心の持ち主でした。人を噛む、すぐにかんしゃくを起こす、愛想はあまりよくない、などなど……。ただし、人間そのものが嫌いなのかというと、そうでもないようです。一人でいることをいやがって、誰かがいる部屋に入ってきてくつろいでいたり、鳴くなどして自分の存在を主張することも珍しくありません。要するに、性格が不器用というのに尽きるように思われます。
 
 
 
ももたろうくん 猫
 
 
 
 このウィルですが、ももたろうくんの出現によって、最近はとても大きな悩みを抱えることになってしまいました。ウィルにとっては、ももたろうくんがわが家の新たなアイドルとして君臨するのが、面白いわけがありません。光のあるところには、必ず闇があるといいます。あのアナキン・スカイウォーカーと同じように、性格にもともと危ういところのあったウィルは、シスの暗黒卿にそそのかされるまでもなく、容易にダークサイドに堕ちてゆきました。
 
 
 その結果は、すぐに外面に現れるようになります。ここ4ヶ月のわが家は、ウィルが巻きおこすテロの脅威につねに脅かされています。壁やオブジェや床など、対象を問わずに尿をまき散らすという強硬手段に訴えはじめたウィルを、もう誰も止めることはできません。
 
 
 嫉妬の苦しみを味わわせないように、みなでウィルを一生懸命かわいがってはいるのですが、ウィルは「そんなことに騙されるか!」とでもいわんばかりに、怒りくるって自前のライトセーバーを振りまわし、おしっこまき散らしの害を、いたるところに与えつづけています……。遺憾なことに、話がすこし上品ではない方向に行ってしまいました。もちろん、ライトセーバーうんぬんについては、怒っている様子をあらわす比喩にすぎないので、特定の身体部位を指すものではないことをここにお断りしておきます。
 
 
 
アナキン・スカイウォーカー ライトセーバー
 
 
 
 とはいえ、人間たちの方にもやましいところがないわけではありません。臆病でかわいらしい子猫が家にやって来て、無邪気で純真な魅力をこちらに振りまくとき、その猫のことをちやほやせずにいるのは至難の業です。何といっても、ももたろうくんはかわいすぎます……。しかし、老いた猫は、そうした人間たちのはしゃぎようをきわめて敏感に察知します。最近ではテロも沈静化しつつあるのでやっとひと安心といったところですが、ウィルもわが家の大事な一員であることは言うまでもありません。二匹とも、できるだけ平等にかわいがってゆきたいと思います。
 
 
 今日の記事のうちには哲学的な教えがなかったようにも思いますが、最後にここから学びとれる教訓を考えておくことにします。近世を代表する政治思想家であるトマス・ホッブズは、プライドこそが人間を争いに引きずりこんゆく最大のファクターであることに注意をうながしています。嫉妬のあまりテロリズムに走るウィルを見ていると、誰かのプライドを傷つけてしまうと、思いもかけない損害が引きおこされるものだという真理をあらためて痛感します。これが猫ならばおしっこの害くらいですみますが、人間となると、下手をすると宗教戦争にまで発展しかねません!「平和を守るためにも、けっして他の人の自尊心を傷つけてはいけない」を結論として、今日の記事を終えたいと思います。
 
 
 
トマス・ホッブズ 宗教戦争
 
 
 
 
(Photo from Tumblr)