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イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、キリスト者としてブログを書いています。

魂のはてしない鍛錬   ー眼医者さんについてのエピソードのおわりに

 
 今回のことを通してあらためて思い知らされたのは、僕はこれから、精神的にもっと強くならなければならないということでした。シリーズの終わりに、反省の念をこめつつ、この点について考えなおしてみることにします。
 
 
 眼の健康のことは自分の自由にはなりませんが、精神の意志のほうはあくまでも自分しだいです。たとえば、「哲学者として、一人立ちすることをめざす!」という目標を立てたのならば、その目標にむかって日々進んでゆくという決意を阻むものは、原理的にいって何もありません。たとえ、眼の調子がよくないとしても、それはやむをえない事実として受けいれて、その中でベストを尽くしてゆけばいいはずです。
 
 
 今回の僕のケースの場合、「うあぁ、もうダメだ!」という状態におちいってしまったのは、理想の賢者からはほど遠いと言わざるをえません……。一度は、眼と将来の二重の不安に押しつぶされてしまいましたが、今は、自分の心が折れるということだけはなくなりました。
 
 
 デカルトという哲学者は『情念論』において、次のように言っています。自分の意志でどうにもならないものに対する執念をなくし、ただ、自分の生を導いてゆく精神の意志を認識すること、それこそが道徳の鍵なのだ。そのことが本当にできるようになったときには、ひとは、自分自身にたいする内的な感動を、すなわち、自己にたいする尊敬の念を抱くはずである。
 
 
 これこそが、デカルトが「高邁の心」と呼ぶものにほかなりません!「高邁」という言葉になじみがないとしたら、高貴さと言いかえることもできます(ただし、こちらもなかなか縁のない言葉ではありますが)。自己にたいする尊敬というのは、たしかに、とても高貴な感じがします。
 
 
 デカルトは、このような精神の高みは、他のあらゆる学問を学んだあとに、知恵の最後の完成として身につけることができるものだと考えていたようです。すべてのことを知りつくしたのちに成しとげられる、魂の完成。僕は、その境地まで行き着くにはまだはるかに遠いですが、今回のことをとおして、目標だけは、どうにかかいま見ることができました……。
 
 
 ここから、哲学という営みそのものの目的も、おぼろげに見えてきます。哲学には、医学のように、問題にたいする特効薬をポンと出すことはできません。魂の悩みにたいして、ミオピン、アデホスコーワ、サンドールのトリオのような薬があればいいのですが、残念ながら、人間には、自分自身で苦しんでみないと、大切なことを学びとることができない部分もあるようです。
 
 
 本を読むことで、はるか昔の偉人たちの言葉を学びとりながら、ひとつひとつ、生きるための知恵を実地で学びとってゆくこと。このように考えてみるとき、「哲学とは、魂のはてしない鍛錬である」と言えることがわかってきます。僕もまだまだ未熟なところだらけですが、数十年後には、魂ももう少しは完成に近づいているのでしょうか……。とにかく、人生という巨大な大学の学生として、これからも学びつづけてゆくしかなさそうです!
 
 
 
眼精疲労 デカルト 高邁の心 情念論
 
 
 
 今回の件では、ブログ上でもTwitter上でも、さまざまな励ましの言葉やアドバイスをいただきました。その一つ一つのメッセージが、とても心にしみる、ありがたいものでした。「たとえ不安だと感じているとしても、不安さえも楽しんでみてはどうですか?」という、とても高度なアドバイスもいただいたりして、考えさせられることのとても多い一週間でした。
 
 
 最後に、今回のことでとてもお世話になったピノコくんに、感謝の念をささげたいと思います。正直にいって、今の僕には、自分の将来がなかなか見えてこないこともあって、眼の不調のことをきっかけにして、精神的にも完全にダウンしてしまいました。そうした中でも、ピノコくんは、「今やっていることは、とても大切なことだと思う」と、ずっと励ましつづけてくれました。
 
 
 僕の中にはまだ、自分でも情けなくなってしまうほど弱いところがありますが、自分のことを信じつづけてくれるピノコくんがいなければ、これからも頑張ってゆくことはとてもできないだろうと思います。ピノコくん、今回も本当にありがとう。僕は決してあきらめないので、これからもよろしくお願いします。
 
 
 今回のシリーズは、不覚にも、自分で思っていた以上に弱々しいトーンになってしまい、申し訳ありませんでした。次回からは、元気に新しいシリーズを始めたいと思います。読んでくださって、ありがとうございました!
 
 
 
 
(Photo from Tumblr)