イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

アンティーク商人のS

 
 ところで、今週の日曜日の午後には、フランスに留学していた時代の友人のSに会ってきました。彼は中国人で、ふだんは北京に住んでいます。
 
 
 「よう、philo1985。元気してるか?こっちの商売は順調だよ。そっちは?な……。そりゃあ、ひどいな……。え、クリスチャン!?お前、正気か?」
 
 
 Sは、アンティーク商人です。彼は世界中を飛びまわりながら、青銅器や陶磁器のような骨董品を買って、本国で売りさばいています。なんだか、ロマンのある仕事です。彼は、数年前の金融危機のときに金融の仕事に見切りをつけて、この仕事に転職しました。
 
 
 留学時から要領のいいやつだと思ってはいましたが、ここまで出世するとは思わなかったというくらいのイケイケぶりです。なにしろ、去年は株にまで手を広げて、資産を大いに増やしたとか……。彼はまだ、僕より二歳年上の32歳ですが、ここまで勝っていていいのでしょうか!
 
 
 「お前のほうは、なんか、かわいそうだな……。とりあえず、眼を治せよ。まずは眼を治さないと、神さまもクリアーに見えないだろう?」
 
 
 僕は答えました。神さまは肉体の眼がなくても、心の眼で見えるんだ。今は、それだけが僕の慰めなんだ。グスン……。
 
 
 それはともかくとして、その日は、Sと一緒に白金台の松岡美術館でアンティークを鑑賞したあと、神保町の古本街で書道関係のカタログを探しました。僕はほとんど眼をつぶっていましたが、彼が電話で取り引きをしているところも見ることができて、Sのふだんの仕事ぶりが少しだけわかった1日でした。
 
 
 
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 上の写真は、Sがその日に予約していた赤羽のホテルの部屋のものです。この部屋のなかでも、彼とは色々なことを話しました。
 
 
 「philo1985よ、そろそろ、お前も金を稼ぐことを学ばなきゃならん。そうでないと、お前はいつまでたっても一人前になれんぞ。なに、今は眼のせいでどうしようもない?もう全部どうでもいい?うーん、たしかになぁ……。とりあえず、今は休むしかないかもな。
 
 
 なんか、お前を見ているとかわいそうになってきたから、今日の夜ごはんは俺がおごるよ。なに、気にするな!なんでもお前が食べたいものを食べようじゃないか。何がいい?」
 
 
 申し訳なかったですが、Sがいいからいいからと言ってくれるので、ご馳走してもらうことにしてしまいました。さて、何を食べるか?その答えはもちろん、決まっています。その日は逆流性食道炎の調子もそれほど悪くはなかったので、赤羽のアジア料理屋さんで、おいしいナンカレーを食べました。