イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、キリスト者としてブログを書いています。

人間性の根底にあるもの

 
 ところで、弱さについては、それを考えないようにする力が人間には強く働いているように思います。それは、誰でも、自分の弱さを考えないですむならば、それに越したことはないからです。
 
 
 誰でも、状況によっては、いつでも徹底的な弱さのうちに落ちこむということがありえます。その意味では、弱さの体験は、すべての人間のうちに潜在的に含まれているといえそうです。
 
 
 「無数の力能をもつ人間の根底には、徹底的な無能力が横たわっている。」哲学的な言い回しを用いるならば、そのように表現することもできるかもしれません。突然の病気や心の病などは、この無能力をむき出しにします。
 
 
 けれども、もちろん、人間としては、そんなものは直視したくありません!だからこそ、弱さは、哲学的思考においてはつねに後景に退けられてきたように思います。哲学者たちは、何かができることについては多くを語りますが、何もできないことについては、概して口をつぐんできました。
 
 
 
弱さ 哲学 イデアの昼と夜
 
 
 
 かくいう僕自身も、5月からはじめたこの『イデアの昼と夜』がそのまま続けられていたら、この弱さというテーマからはずっと逃げつづけていたと思います。カッコいいことや楽しいことだけ語って生きていられたら、それに越したことはありませんでした……。
 
 
 ところが、今や、めでたいことに(?)、僕は自分が弱いことを受けいれざるをえなくなりました。食道炎も辛いし、ほんの少し治ってきたとはいえ、眼も自由に使えないし、普通に過ごしていてもたえずあらゆる苦難が心に湧きあがってきて、心がはち切れんばかりの毎日です!
 
 
 こうなったら、哲学者として、今まで隠されつづけてきた弱さのヴェールを剥ぐことに、情熱を注ぐのみです。人間という存在は、そもそも弱いのだ。けっして、僕だけが弱いのではないはずだ。何もできなくても、生きていていいはずです……!うう……。できる範囲でがんばります。