イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

いなくなってしまった友人のこと

 
 前回の記事で心の友とか書いてたら、その後に思い出したのである。僕にも、親友と呼べる友がいたのだ。
 

 Tよ、いま君はどうしているだろうか!もうTと話さなくなってから、五年が経つ。いつかまた、話すことのできる日が来るのであろうか……。
 

 Tとは毎日のように会って、あらゆることを話していた。お互いにいつかものすんごい文学を書くんだって言いながら、あらゆる哲学と文学について昼夜を問わず話しまくったのである。あの時期は今から思うと、たぶん本当にかけがえのない時期だった……。
 

 僕みたいな人間とずっと一緒に時間を過ごしてくれてたことには、感謝としか言いようがないのである。Tよ、色々ごめん。でも、ありがとう。俺の人生は君のおかげで、友情という点に関しては、何一つ欠けるところはなくなったのだ。
 

 あの十年間の、幻のような年月。一緒にエジプトで旅をし、カイロの食堂で羊の脳みそを食ったこともあった……。
 
 
 
親友 T 文学 哲学 エジプト カイロ 岩波
 
 
 
 あの時は、二人で爆笑しまくったのだった。食堂のお兄さんから、ごめん、いま食材が脳みそしか残ってないと言われて、脳みそしかないってヤバい、面白すぎるとめちゃくちゃに盛り上がったのである。
 

 いま思い出しているこの時には、もはや笑いはない。ただ、くり返しにはなるけど、ああして時間を過ごせたことに感謝するのみである。
 

 Tよ、本当にありがとう。人生のあの時期を一緒に過ごしてくれて、本当にありがとう。色々迷惑もかけてごめん。でも、ありがとう。
 

 ……Tはいなくなり、後に残ったのは、岩波がどうとか天命がどうとか言っている、くたびれかけた一人の男のみである。もはや、あの時みたいな元気は残っていないような気もするけど、僕はまだ哲学をやり、書き続けている。完全にくたばりきるまでは、まだしばらくはしつこく粘ってみるつもりだ。