ところで、ひとが自己について書く時には、次の二つのケースがありうるように思われます。
1.自分の現状を肯定しながら書く。(自己保存のエクリチュール)
2.自分の現状を断固として否定しながら書く。(自己破壊のエクリチュール)
1は、わりに穏当なタイプのエクリチュールです。「私はこういう人間だが、これでいいと思っている。」人間は、自分で自分を肯定するところが全くないと、いずれはストレス過多で死に至るので、自己保存のエクリチュールを書くことも一面では人間にとって有益なことであるといえるでしょう。
これに対して、2は、もはやなぜそんなことをしているのかも分からないままに、自己の実存をその深みにおいてディスりにディスりまくるタイプのエクリチュールです。ハードコアなラッパーのドス黒いビーフのごとく、おのれ自身を最低のマザーファッカーとして地の底まで貶める、悪夢のような自己への反逆です。
「マザーファッカー」はさすがにあまりにもお下品なので、「ダメッ子ちゃん」くらいに訂正しておくことにして、本題に戻りますと、自己破壊のエクリチュールを書くというのは、言うまでもなく、自分自身にとっての危険を意味します。自分自身の弱さ、情けなさ、卑怯さに向き合うというのは、あまり心地よいものでないのは言うまでもありません。
ただし、「私なんてまだまだです」的な謙遜になってしまうと、これは自己破壊というよりは、ほとんど自己弁護に近いものになってしまう。保身のために過度の謙遜に走るのは、むしろそれはそれでマザーファッカー、いえ、ダメッ子ちゃんのすることであるといえます。
自分がそれまで気づきもしなかったこと。しかし、自分でもどこかで無意識のうちにごまかしてしまいたいと思うがゆえに、本当は見ていたにもかかわらず見えていないふりをしていた自分の欠陥を、みずから白日の光のもとにさらすこと。自己に対する誠実さがここでは問われることになりますが、真理を求める哲学徒には、この自分自身に対する率直さが必要であることはいうまでもありません。
筆者の場合、2を実践せねばと思いつつも結局1に終始しつつ、それでも2にゆきたいけれど恐いしやっぱり1と2の中間くらいにしておこうという妥協に甘んじているので、もっと修行が必要なのかもしれません。ちなみに、自己破壊のエクリチュールの古典といえば、ジャン・ジャック・ルソーの『告白』が、あまりにもあけっぴろげすぎて、作者よりもむしろ読者のほうが不安になるほどの名作なので、もしよろしければ、ぜひ岩波文庫のページをめくってみてください……!
2.自分の現状を断固として否定しながら書く。(自己破壊のエクリチュール)
1は、わりに穏当なタイプのエクリチュールです。「私はこういう人間だが、これでいいと思っている。」人間は、自分で自分を肯定するところが全くないと、いずれはストレス過多で死に至るので、自己保存のエクリチュールを書くことも一面では人間にとって有益なことであるといえるでしょう。
これに対して、2は、もはやなぜそんなことをしているのかも分からないままに、自己の実存をその深みにおいてディスりにディスりまくるタイプのエクリチュールです。ハードコアなラッパーのドス黒いビーフのごとく、おのれ自身を最低のマザーファッカーとして地の底まで貶める、悪夢のような自己への反逆です。
「マザーファッカー」はさすがにあまりにもお下品なので、「ダメッ子ちゃん」くらいに訂正しておくことにして、本題に戻りますと、自己破壊のエクリチュールを書くというのは、言うまでもなく、自分自身にとっての危険を意味します。自分自身の弱さ、情けなさ、卑怯さに向き合うというのは、あまり心地よいものでないのは言うまでもありません。
ただし、「私なんてまだまだです」的な謙遜になってしまうと、これは自己破壊というよりは、ほとんど自己弁護に近いものになってしまう。保身のために過度の謙遜に走るのは、むしろそれはそれでマザーファッカー、いえ、ダメッ子ちゃんのすることであるといえます。
自分がそれまで気づきもしなかったこと。しかし、自分でもどこかで無意識のうちにごまかしてしまいたいと思うがゆえに、本当は見ていたにもかかわらず見えていないふりをしていた自分の欠陥を、みずから白日の光のもとにさらすこと。自己に対する誠実さがここでは問われることになりますが、真理を求める哲学徒には、この自分自身に対する率直さが必要であることはいうまでもありません。
筆者の場合、2を実践せねばと思いつつも結局1に終始しつつ、それでも2にゆきたいけれど恐いしやっぱり1と2の中間くらいにしておこうという妥協に甘んじているので、もっと修行が必要なのかもしれません。ちなみに、自己破壊のエクリチュールの古典といえば、ジャン・ジャック・ルソーの『告白』が、あまりにもあけっぴろげすぎて、作者よりもむしろ読者のほうが不安になるほどの名作なので、もしよろしければ、ぜひ岩波文庫のページをめくってみてください……!