歌うことと欲望の真理
今はゆかむ さらばと云ひし夜の神の 御裾さはりて わが髪ぬれぬ 与謝野晶子 神は、わたしのもとにやって来る。プリミティブな神学的思考が『みだれ髪』の世界のうちにも突如としてよみがえっているのを、私たちは見いだします。「わたしのもとを訪れるあの人…
その子二十 櫛にながるる黒髪の おごりの春の うつくしきかな 与謝野晶子 欲望されることを欲望する。とくに、性的な意味をおびた身体を他者から求められることを欲望する。こういう欲望に取り憑かれてしまった人は、まわりの人びとを惹きつけずにはいない見…
細きわがうなじにあまる 御手のべて ささへたまへな 帰る夜の神 与謝野晶子 昨日は和泉式部の和歌を取りあげたので、私たちの時代に近いところから、もう一人だけ論じてみることにしてみたいと思います。明治の初めに生まれた歌人である与謝野晶子もまた、恋…
ものおもへば 沢の蛍もわが身より あくがれいづる魂かとぞみる 和泉式部 今日から七月です。夏がこれから本格的に始まろうとしていますが、平安時代の貴族たちは、言葉のうちで涼しさを感じとるということのうちに、喜びを見いだしてやまない人びとでした。…