イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

蓼食う虫も好き好き

論点: 他者には自分が自分自身に対して望んでいるものではなく、その他者が望んでいるものをこそ与えなければならない。 この点、贈り物をするという経験は非常に教育的である。 前回にも書いたように、自分がSWのソフビ人形をいくら好きでたまらないからと…

お付き合いで必要なこと

論点(再提示):愛の体験もまた、人間を「他者のために生きる」という実存可能性へと向け変えるきっかけの一つなのではあるまいか。 恋愛というのは自分自身も楽しいものなので、恋とはいわば相互的な自己愛に他ならないのではないかという反論もありうる。…

「存在の家」の探索

前回の論点に、別の観点から補足を加えておくことにしよう。 論点:愛の体験もまた、人間を「他者のために生きる」という実存可能性へと向け変えるきっかけの一つなのではあるまいか。 赤ちゃんの話からいきなり恋愛の話に飛ぶのは、いささか唐突と思われる…

赤ちゃんの愛らしさ

さて、本題に戻るとしよう。 論点の再提示: 他者のために何かをするということは、たとえ自分が死ぬとしても意味のあることなのではないだろうか。 この点、いちばん範例的であるのはやはり子供、とりわけ赤ちゃんであろう。 赤ちゃんのかわいさについては…

人生よ、ありがとう

哲学の話になったついでに、少しだけ脱線しておくことにしたい。僕は今日(2/13)、久しぶりに哲学の研究会に参加してきたのである。 「……なるほど。」 いや、よかったよ。ソクラテスとかカントとか、レジェンダリーな先人たちについての発表を聞いていて、…

この世に何を残せるか

これまでとは話の向きが少し異なるのだが、ここから、これまでとは違う観点から死の問題にアプローチしてみることにしたい。 論点: 他者のために何かをするということは、たとえ自分が死ぬとしても意味のあることなのではないだろうか。 そうなのである。わ…

無知を確保しつつ、無の可能性を思考する

論点: 死から無に期するという可能性を取り去ることは、少なくとも理論的な見地からは不可能である。 もう一度整理しておくことにしよう。死んだ後にはどうなるのかという問いに対しては、大きく言って次の二つの答えの可能性があると考えられる。 死後の可…

存在か無か

論点: われわれ人間は、無ではなく存在の側に賭けることしかできないのではあるまいか。 たとえ今日死ぬとしても、そして、たとえ仮に人間は死んだら無に帰する(注:繰り返しにはなるが、この想定は、筆者自身の信ずるところではないけれども)のであると…

人生最後の一日

論点の再提出: もしも、死んだら無になるのであるとすれば、われわれが存在していることにも意味がなくなってしまうのではないだろうか。 もしも今日が最後の一日だとしたらというのは、映画やドラマでもよくあるシチュエーションである。この想定を手がか…

もしも全てのことが、無に帰するとすれば……。

論点の再提出: 「死んだら一体どうなるのか」という問いは、この世ではほとんど発されることがない。 「死ぬ時には苦しみたくないよね」みたいな話なら、たまに話題に上ることもなくはないだろう。しかし、これはすでに論じたように、あくまでも「死」へと…

沈黙は語る

問い: 人間は、死んだら一体どうなるのか? 哲学には、答えを出せるかどうかには関わりなく、問いを発するだけですでに意味があるというケースが往々にしてあるように思われるが、この問いはまさしく、そうしたものの一つなのではなかろうか。 この問いは、…

「まあ、なんと言うか……。」

前回の論点とも関連するが、われわれは、次の二つのモメントを区別せばならぬように思われる。 ①死に至るまでの、種々の精神的・肉体的苦しみ。 ②死そのもの。 ①はつまるところ死そのものではなく、いまだ生に属している。怖いとか辛いとかいったことは、と…

「わたし自身ではありえない」

論点: もしも、死が無に帰することを意味するとすれば……。 仮に、人間が死んだら無になるとしてみよう(繰り返しにはなるが、筆者自身はそう信じているわけではないけど。しつこくてごめん)。 その場合、何をどうやったとしても、われわれにはいずれ無に帰…

エピクロス派の主張の検討

論点: 哲学の探求も、かなりの部分まで直観に拠りつつ行われざるをえない。しかし……。 たとえば、死についてのエピクロス派の考えは、筆者にはどうしても人間を納得させてくれるものには思えないのである。 エピクロス派の主張: 死は、人間にとっては何物…

直観と生命

前回の伏線を回収せねばならぬ。 論点: 直観は、生命そのものの奥深い働きである。 ジョージ・ルーカスがミディ・クロリアンという設定で掘り下げようとしたのは、直観(この場合はフォース)と生命との奥深い関係そのものであったように思われる。それを「…

若干の脱線

本題からは少し逸れてしまうが、この機会に以下の論点について考えておくこととしたい。 論点: 直観は、生の偉大な導き手である。 たとえば、今の主題である死に関しても、「哲学者にとって、死について考えることは重要である」と言われた時に、「その通り…

反対論の検討

ところで、死について考えるという企てについては、次のような疑問もあるかもしれぬ。 疑問: なんでわざわざ、そんなテンション下がるようなこと考えるんすか? 確かに、こんなこと考えててひょっとしたら考えてるストレスのせいで胃腸の調子が悪くなったと…

「最大の不幸」

あれからやはり気になってエピソード8を見てみたが、意外と面白いんじゃね……?というわけで、「エピソード8、実は見るべきものもなくはないんじゃないか問題」をいずれ提起したいものだが、この問題は簡単には決して片付かない大仕事になるであろうことは間…

筆者自身のスタンス

まずは参考のために、筆者自身のスタンスを表明しておくこととしたい。 筆者の、死に対するスタンス: 筆者は、覚悟を決めておこうと思い続けながらも、死を恐れている人間の一人である。 思えば、二十代の中頃から死ぬことが怖くて仕方なくなって、しばらく…

死について考える

今日から新しい探求に入ろうと思うのだが、今回のテーマは、以下のものとしたいのである。 問い: 哲学者は、死についてどのように考えるべきか? めちゃくちゃ暗い問いではある。僕も、最近はひたすら真面目かつ無味乾燥なものを書き続けてきたので、たまに…

探求に区切りをつけるにあたって

最後に自分の近況も振り返ってみたということで、今回の探求はこの辺りで一区切りということにしたい(気がつけば、始めてから三ヶ月も経ってしまった)。「存在の超絶」については、これからも繰り返し取り上げてゆく必要がありそうであるが……。 ともあれ、…

歩みを振り返りつつ

論点: たとえ偉大な先人たちであったとしても、必要と感じられた時には異なる見解を提出することを恐れてはならない。 先人たちは偉大である。現代を生きているわれわれの見方の方が正しいと思っていても、実は先人たちの方が深いところを見抜いていたとい…

先人たちは偉大であるか

恋と真理という論点については場を改めてしっかりと論じる必要がありそうであるが、哲学徒としてはとりあえず、次の論点が重要であろう。 論点: 「先人たちは真理の偉大な探求者であった」という見方は、哲学徒にとっては欠かせないものなのではないだろう…

『こころ』の問題圏

問い: 恋は、哲学という営みからの逸脱であるか? たまには、文学作品を参照しながら考えてみることにしよう。夏目漱石の『こころ』においては、恋に落ちることは真理の道なのではないかという問いが提起されているのである(以下、一応はネタバレ注意であ…

転移に由来する狂気について

論点: 真理の審級は、わたしからもあなたからも独立している。 すでに論じたことではあるが、真理がどのようなものであるかということは、わたしやあなたの意志によってはどうにもならない。一番わかりやすい例でいえば、数学の内容は言うまでもなく、人間…

真理と教育

論点: 他者であるあなたの意識はわたしの意識を超絶してはいるが、真理は、そのわたしをもあなたをも越えてとどまり続けるであろう。 これまで自己と他者について、「存在の超絶」という言葉を手がかりにして論じてきたが、ここからは、この両者を二つなが…

超絶と掟

問題提起: 他者に対する贈与は、厳密に考えるならば、算定不可能な行為としてしかなされえないのではないだろうか。 他者であるあなたの意識は、わたしの意識を超えたところに存在している(存在の超絶)。したがって、この超絶する他者に対して「善をなす…

倫理の根源と、脱我としての愛について

論点: 存在の超絶を認めることは、すべての倫理の出発点なのではなかろうか。 他者であるあなたの「わたしはある」を、わたし自身の「わたしはある」と同等の重みを持つ事実として認めること。あるいは、そのことを超えて、あなたの「わたしはある」へ向か…

幸福と身代わり

論点: 他者であるあなたもまた、わたしと同じように、人間であることの有限性を免れえないであろう。 わたしは考える意識であるのと同時に、他の誰でもない「この人間」でもある(二つ折れの与え)。同じように、他者であるあなたもまた、わたしを超絶した…

超絶と証言

論点: 他者の存在はわたしを超絶しているが、それでも、何もかもが知りえないというわけではない。 ここからは「存在の超絶」を前提とした上で、他者について知りうることについて探ってみることにしたい。というのも、他者の超絶という事態のうちに含まれ…