2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧
地上的なものにとらわれずに天の真理を求めつづける、哲学の探求者。しかし、私たちはここで、かれに襲いかかる危険のことに注意を払っておかなくてはなりません。 それは他でもない、世間から認められたい、売れたいという誘惑のことです。哲学の領域におい…
哲学的な思惟なるものは、個人的なディテールを離陸して、普遍的なイデーの大空へと羽ばたいてゆきます。お金という目下のトピックについても、時代と場所を離れた永遠の真理をめざして考えるべきであるように思われます。 さて、いささか月並みなものに見え…
ある女性漫画家の方が、次のように書いていたのを思い出します。「お金がないのは、首がないのと同じだもの。」なかなか強烈ですが、一度聞くとけっして忘れられないフレーズです。 お台場あたりの海が見えるタワーマンションに住めなくてもいい。表参道の内…
探求をはじめるにあたっては、たまには具体的なトピックから開始してみるのもよいかもしれません。僕が近ごろ少しだけ頭を悩ませているのは、ほかでもない献金の問題です。 僕が通っている教会では、ほかの数多くの教会と同じように、献金を捧げることは義務…
今日からは、恋愛についで、ひとの魂を悩ませるもう一つの大問題について考えておくことにしたいと思います。それは、お金をめぐる問題にほかなりません。 「おお、金よ……。」およそこの世に生きる人間たちの中で、この問題に苦しめられなかった人は、おそら…
前回までで、私たちは恋についての考察をひととおり終えました。筆者としては、この後の人生でもう恋に落ちることはないだろうと思っているので、とりあえず、恋というイデーについては、この人生ではこれくらいでいいかなという気がしています。 「生きるこ…
「完璧なあなた」をめぐる体験を通して若者の心のうちに空いた穴は、何をもってしても埋めることができそうにないほどに大きなものです。 たしかに、哲学や芸術、科学といった、永遠の真理にかかわる仕事、または、命をかけて追いもとめるに値する、他のさま…
失恋の苦しみは、時に耐えられないと思われるほどに大きなものになりえます。しかし、この苦しみの体験が、信仰へのまたとない準備という側面をかんがみるとき、信仰者は、人生というものへの驚異の念にとらえられずにはいられません。 「完璧なあなた」、あ…
失恋した若者が、世界も自己もともに崩れ去ってゆく全面的な破壊のプロセスをその身に引き受けざるをえないのは、かれの内にある「完璧なあなた」の理念が、あらゆる存在者を断罪せずにはいないからです。 この段階までくると、もはや事態はほぼ完全に脱性化…
若者が「完璧なあなた」の理念に触れたのち、失恋の苦しみをこうむっている時点において、かれは気づかないうちに、すでに神の御手のうちに入りこんでいます。 もちろん、かれは自分の苦しみが、現実のうちにいるあの彼女を失ったことからくると考えているこ…
「恋の体験は、恋される対象とはほとんど何の関係もない。」このことは、うまくいった恋愛なるものについて考えてみるならば、いっそう理解しやすくなります。 恋愛がうまくゆき、恋の相手と長い付き合いをはじめた場合にいわゆる「最初のときめき」が失われ…
さて、恋の話題に戻りましょう。この体験における最大の逆説、それは、若者が憧れる「完璧なあなた」のイメージは、ある意味で、かれの愛しい彼女とはなんの関係もないということです。 かれは確かに、彼女のさまざまな細部をかぎりなく大切にしておこうとし…
ところで、実在の探求というテーマについては、今回の話題とも関連しますが、ひとつつけくわえておくべきことがあります。 恋する若者は叫びます。「真に実在するもの、それは〈彼女〉である!」この叫びがある意味で厄介なのは、ここには真実の一片が含まれ…
もしも、ひとを天上に向かわせるものを霊と呼び、地上に引きとめるものを肉と呼ぶならば、恋の体験においては、霊と肉とが分かちがたいしかたで混じりあっているといえます。 恋の体験における愛しい彼女は、その存在論的なステータスにかんして、二つの極を…
悪魔なるものの由来を考えるならば、恋愛の秘密にもすぐに納得がゆきます。信仰の言葉によるならば、悪魔とは堕天使、つまり、天から追放された天使のなれの果てであるというのです。 恋する若者にとって、愛しい彼女は、堕天使とまったく同じ存在論的ステー…