イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

論争は避けるべし

論点: 哲学者同士の対話は、できることならば、文章上のものよりも顔と顔を合わせての方が望ましい。 この点、先人たちの歴史を見ていても、悲惨なケースは枚挙にいとまがないのである。 たとえば、ライプニッツ・アルノー書簡だ。当時の最高の知性が言葉を…

対話と対面

論点: 対話することは、哲学の生命そのものである。 真理っていうとなんか堅苦しい感じもするけど、要するに、毎日誰かとしゃべり続けるということなのではあるまいか。 われわれは、これってこうだよねとか、あれってああなんじゃねとか、日夜語り続けなが…

ソクラテスの道

論点: 哲学者が追い求めるべきものは、金銭でも名誉でもなく、真理である。 お金と承認については、すでに考えた。それで今やわれわれは、真理へと進まねばならぬ。 真理である。よく考えたら、他に何か目的を持たずに真理のみを求めるというのは、なかなか…

たった一人の誰かに向かって

問い: 「いいね」が見えるようになってしまった時代の哲学者はどのように語り、どのように生きるべきか? ブログを書き始めてからそろそろ四年半になろうとしているが、こういう話題を色々気にせずに書けるようになってきたことはよかったのかなって気がす…

承認について考える

問題提起: 哲学はまずもって、他人のためではなく、おのれのためにするものなのではあるまいか。 孔子先生の言う通りであるよ。結局、自分の修行のためなのよ。他の人に喜ばれるためではないんよ。 しかしそれでも、われわれは時々哲学をやってて空しいよう…

こうしていたくないわけでもない

問題提起: 哲学はまずもって、他人のためではなく、おのれのためにするものなのではあるまいか。 孔子先生の言う通りであるよ。結局、自分の修行のためなのよ。他の人に喜ばれるためではないんよ。 しかしそれでも、われわれは時々哲学をやってて空しいよう…

哲学は、面白いというだけでいいのか

論点: 前途有望な若者に哲学の道を勧めることが正当であると言うことができるためには、哲学には将来の不安定さを補って余りあるだけの、何らかの善さがあるのでなければならない。 繰り返しになるけど、いくら勉強してもお金は稼げない可能性が高いわけで…

ただ、一切は過ぎてゆく

論点: 哲学の道に進むとすれば、その若者はどこかの時点で必ず「果たして将来生活してゆけるのか」という問いに悩まされることになろう。 おそらく、最大にして究極の問題とはこれであろう。 ていうかさ、お金の問題さえなければ、哲学の道が最高なことは間…

真理とパレーシア

これから、哲学の道に進むべき(?)根拠について考えるにあたって、まずは次のことを確認しておきたいのである。 論点: 哲学において、率直に語ることは真理に至るための必須条件である。 たとえば、哲学に興味ない人に対して、哲学自体を正当化しなきゃな…

哲学のススメ?

うーむ、わからん。はたして、何を言ったらよいものか……。 「……どうしたんですか?」 ああ、うん。いやね、僕はこの間、A君という青年と少し話をしたのだ。 A君はちょっと暴走気味のところもあるが、前途有望で元気のいい高校二年生なのである。ただこの子、…

他者理解についての探求の終わりに

今回の探求の暫定的結論: 私たちは、他者を理解することを諦めるわけにはゆかない。 「知っている」と思い込むことは致命的に危険ですが、「知らなくてもいい」と放棄してしまうことも、決してよい結果をもたらしません。どれだけ果てしのないものであろう…

「幻想は、我々の進むべき道ではない」

船越さんに関する二言明: 「船越さんは、感じのよい女の子である。(甲言明)」 「船越さんは、感じのよい女の子として振る舞い続けることを自分でも止められない女の子である。(乙言明)」 事情や背景についてはとりあえず置いておくとしても、甲言明が偽…

甲か乙か、船越さんの実像

考える時間がほしいと言って去っていった船越さんからは、言うまでもなく、何の連絡もありませんでした。A君と彼女の関係については、他に特に何も起こらない限りはこの断絶をもって最終段階とするのが、予測としては妥当なのではないかと思われます。 論点…

対話を諦めてはならない

論点: 哲学徒は、対話というコミュニケーションの方式を諦めるわけにはゆかないのではあるまいか。 現実には、私たちの人生においては、対話の限界に突き当たることばかりかもしれません。対話することに対する、また、相手の言うことに耳を傾けることに対…

愛と民主主義、その危機について

論点: 片方が気づかないうちに対話を打ち切られているというケースは、多数存在する。 互いの価値観や考え方が大きく異なる際には、対話することは多大な労力を要します。 その上、この過程は双方にとって、心地よいとは決して言えないような性質のものです…