イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

法-外な贈与

本題に戻って、もう一度、神の愛の哲学的表現のほうに立ち返ってみることにしましょう。 「神の愛とは、現存在への、超越の内部超出のことである。」 4月には、真理の審級の、わたしとあなたへの現前という問題を扱いましたが、心あるいは意識については、…

Appendix:コギトの無力

思考の(偽)メシア性と独断性という問題に行き当たった時には、次のような疑問が浮かんでくることは避けられないように思われます。 「哲学的思考は、その本質からいって、独断的であるほかないのだろうか。」 遺憾ながらそうであるほかないというのが、筆…

メシア性と独断性

思考の(偽)メシア性の問題については、糾弾と否認というモメントに注目しないわけにはゆきません。 「思考はメシア的であろうとするかぎりにおいて、必ずその独断性を非難されないわけにはゆかない。」 仮に、ある人が「わたしはメシア、すなわち救世主で…

思考の(偽)メシア性という問題

1.本来的思考において語られることは、父の意に適っている。 この規定を眺めていると、次のような疑問が浮かんでくるのは避けられないように思われます。 「はたして、神の意に適う思考などというものがありうるのだろうか。」 自分が考え、話していること…

ドイツ観念論との交錯

三位一体論の視点に立ってみると、「わたしが考える」というごく当たり前のものに見える出来事も、まったく違ったふうに見えてきます。 「わたしは、絶対者において考える。」 まずは、以前にも少し論じたように、語る、あるいは考えるという行為は、真理と…

絶対的内面性と超越のトリアーデ

第三の位格である聖霊については、次の論点を指摘しておくことにします。 「第三の位格はわたしにおいて、絶対的内面性とでも呼ぶべきモダリティを構成する。」 信仰の言葉によれば、第一の位格である父や第二の位格である子と同じように、第三の位格である…

第三の位格

三位一体論に話が及んだので、この機会に第三の位格についても触れておくことにします。 「信仰の言葉によれば、人間は、第三の位格である聖霊が働くことによって神を信じるようになる。」 何かを信じるようになるということは、よく考えてみると、とても不…

「はじめに、ロゴスがあった」

ロゴスという概念について語ることが難しいのは、ロゴスもまたイデアと同じように、信仰対象という性格を持っているからです。 世界を創造する言葉という意味でのロゴスという概念をはじめに打ち出したのは、フィロンという古代のユダヤ人哲学者でした。その…

ロゴスとイデア

来たるべき知恵の探求を、ここで仮に哲神学と呼んでおくことにすると、哲神学的な観点からは、次のような点を指摘することができそうです。 「ロゴスとイデアは、それぞれ〈語られたもの〉と〈見られたもの〉として、互いが互いに向けて対向する。」 信仰の…

イデア論をめぐる七つの論点

今回は少し(かなり?)マニアックになりますが、イデア論をめぐる七つの観点を提示しておくことにします。 1.認識論的観点。フッサールの研究は、意識における意味作用のイデア的同一性を発見するところから、本格的に始まりました。のちに「本質直観」と…

この世はイデアのまわりを回る

本題からは少し外れますが、よい機会なのでここで脱線して、以下の点について考えておくことにしたい。 「イデアは存在する。」 キャンディーズのメンバーたちは、「恋する普通の女の子」に扮して歌を歌います。しかし、誰もが知っている通り、「恋する普通…

キャンディーズ『暑中見舞い申し上げます』

やはり、一曲だけでもキャンディーズの名曲を紹介させていただきたいという思いを抑えることができません!季節はもう夏ということで、FINALサマーチューン『暑中見舞い申し上げます』を分析してみることにします。うーわお! キャンディーズ/暑中お見舞い…

存在論的差異とは

というわけで、哲学の未来のためにも、ぜひともキャンディーズの魅力の秘密に迫っておきたいところですが、ここで私たちは、マルティン・ハイデッガーが存在論的差異と呼んだモメントに注目しておく必要があるように思われます。 「存在論的差異とは、存在者…

キャンディーズをたたえて

哲学がこの21世紀を力強く生き残ってゆくためには、どうすればいいのか。その問いへの答えを求めつづけていた筆者は、ひとつのヒントとなるかもしれないアイドルの存在に、あらためて注意を向けさせられました。 「キャンディーズは、ヤバすぎる。」 昭和と…

哲学の戦場

「バック・トゥ・ザ・生者の世界。」なんとか死者の中からの復活を果たし、2017年のバビロン東京に戻ってくることができましたが、さて、これからどうするべきか……。 「哲学に、何ができるのか。」 筆者は哲学の道をすでに選びとってしまいましたが、これは…

久しぶりに踊ろう

愛について書くはずが、気がつくと自己破壊について書いていました。この際、さらにもう一車線分脱線しておくことにします。 「人間には死もあれば、死者の中からの復活もある。」 この一ヶ月ほどの停止期間のおかげで、ひとたびは完全に死にかけた筆者も、…