イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

エピクロス派の主張の検討

論点: 哲学の探求も、かなりの部分まで直観に拠りつつ行われざるをえない。しかし……。 たとえば、死についてのエピクロス派の考えは、筆者にはどうしても人間を納得させてくれるものには思えないのである。 エピクロス派の主張: 死は、人間にとっては何物…

直観と生命

前回の伏線を回収せねばならぬ。 論点: 直観は、生命そのものの奥深い働きである。 ジョージ・ルーカスがミディ・クロリアンという設定で掘り下げようとしたのは、直観(この場合はフォース)と生命との奥深い関係そのものであったように思われる。それを「…

若干の脱線

本題からは少し逸れてしまうが、この機会に以下の論点について考えておくこととしたい。 論点: 直観は、生の偉大な導き手である。 たとえば、今の主題である死に関しても、「哲学者にとって、死について考えることは重要である」と言われた時に、「その通り…

反対論の検討

ところで、死について考えるという企てについては、次のような疑問もあるかもしれぬ。 疑問: なんでわざわざ、そんなテンション下がるようなこと考えるんすか? 確かに、こんなこと考えててひょっとしたら考えてるストレスのせいで胃腸の調子が悪くなったと…

「最大の不幸」

あれからやはり気になってエピソード8を見てみたが、意外と面白いんじゃね……?というわけで、「エピソード8、実は見るべきものもなくはないんじゃないか問題」をいずれ提起したいものだが、この問題は簡単には決して片付かない大仕事になるであろうことは間…

筆者自身のスタンス

まずは参考のために、筆者自身のスタンスを表明しておくこととしたい。 筆者の、死に対するスタンス: 筆者は、覚悟を決めておこうと思い続けながらも、死を恐れている人間の一人である。 思えば、二十代の中頃から死ぬことが怖くて仕方なくなって、しばらく…

死について考える

今日から新しい探求に入ろうと思うのだが、今回のテーマは、以下のものとしたいのである。 問い: 哲学者は、死についてどのように考えるべきか? めちゃくちゃ暗い問いではある。僕も、最近はひたすら真面目かつ無味乾燥なものを書き続けてきたので、たまに…

探求に区切りをつけるにあたって

最後に自分の近況も振り返ってみたということで、今回の探求はこの辺りで一区切りということにしたい(気がつけば、始めてから三ヶ月も経ってしまった)。「存在の超絶」については、これからも繰り返し取り上げてゆく必要がありそうであるが……。 ともあれ、…

歩みを振り返りつつ

論点: たとえ偉大な先人たちであったとしても、必要と感じられた時には異なる見解を提出することを恐れてはならない。 先人たちは偉大である。現代を生きているわれわれの見方の方が正しいと思っていても、実は先人たちの方が深いところを見抜いていたとい…

先人たちは偉大であるか

恋と真理という論点については場を改めてしっかりと論じる必要がありそうであるが、哲学徒としてはとりあえず、次の論点が重要であろう。 論点: 「先人たちは真理の偉大な探求者であった」という見方は、哲学徒にとっては欠かせないものなのではないだろう…

『こころ』の問題圏

問い: 恋は、哲学という営みからの逸脱であるか? たまには、文学作品を参照しながら考えてみることにしよう。夏目漱石の『こころ』においては、恋に落ちることは真理の道なのではないかという問いが提起されているのである(以下、一応はネタバレ注意であ…

転移に由来する狂気について

論点: 真理の審級は、わたしからもあなたからも独立している。 すでに論じたことではあるが、真理がどのようなものであるかということは、わたしやあなたの意志によってはどうにもならない。一番わかりやすい例でいえば、数学の内容は言うまでもなく、人間…

真理と教育

論点: 他者であるあなたの意識はわたしの意識を超絶してはいるが、真理は、そのわたしをもあなたをも越えてとどまり続けるであろう。 これまで自己と他者について、「存在の超絶」という言葉を手がかりにして論じてきたが、ここからは、この両者を二つなが…

超絶と掟

問題提起: 他者に対する贈与は、厳密に考えるならば、算定不可能な行為としてしかなされえないのではないだろうか。 他者であるあなたの意識は、わたしの意識を超えたところに存在している(存在の超絶)。したがって、この超絶する他者に対して「善をなす…

倫理の根源と、脱我としての愛について

論点: 存在の超絶を認めることは、すべての倫理の出発点なのではなかろうか。 他者であるあなたの「わたしはある」を、わたし自身の「わたしはある」と同等の重みを持つ事実として認めること。あるいは、そのことを超えて、あなたの「わたしはある」へ向か…