イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、キリスト者としてブログを書いています。

やけくそになって語りまくる

 
 前回の話のつづきです。ナンカレーを食べてアジア料理屋さんを出て、赤羽のサンマルクカフェでコーヒーを飲んでいたとき、Sが言いました。
 
 
 「ところで、キリスト教の教えってのは、どんなもんなんだ?まわりにクリスチャンがいないから、よく知らんのだが」
 
 
 はじめての外国人への伝道のチャンスです!僕は30分ほどかけて、色々なことを説明しました。聖書のこと。神さまのこと。そして、イエス・キリストのこと……。今でもはっきりと覚えているのですが、Sは僕が話を終えたとき、あっけにとられたような表情になって両目を大きく開いて、こう言いました。
 
 
 「It's a perfect lie ! そりゃ、完璧な嘘っぱちだ!よくもまぁ、そんな……。お前はなんでまた、そんなめちゃくちゃな話を信じてるんだ? 」
 
 
 僕は答えました。確かにめちゃくちゃだけど、神さまがこれだけめちゃくちゃな方法でこの世を救おうとしたっていうのには、とてつもなくロマンティックなところがあると思う。
 
 
 それに、僕みたいに、進むべき道を失ってどうしようもなくなった人間にとっては、もうこれしかないように思えたんだ。どっちにしろ、僕はもうイエス・キリストを信じる以外に、道はないんだよ。こうなったら覚悟を決めて、最後までゆくだけさ!
 
 
 それから僕はやけくそになって、コーヒーカップを片手に振りまわし、愛について語りまくりました。ああ、愛がほしい!僕は、もっと人間どうしで愛しあいたいんだ。どっちにしろ僕の人生は、もうオワコンなんだ。だったらもう全部を捨てて、死ぬまで愛の思想を追いかけるんだ!
 
 
 
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 すると、話を聞いていたSも、とつぜん何かに取りつかれたかのように、愛について語りはじめました。恋人への愛、友人への愛、そして、家族への愛。Sはスマートフォンを取りあげて、彼のお母さんの写真を見せてくれました。
 
 
 彼がどんなにお母さんを愛しているかを話してくれていたとき、僕はそれまで抑えていた(?)感情があふれ出てきて、すべてを忘れて、泣きに泣きまくりました。「わわ、そんなに泣くなよ!俺まで涙が出てくるだろうが……。」
 
 
 上の写真は、Sと愛について語りあったときに彼がノートに書いてくれたものです。彼によると、家族への愛、友人への愛、そして、恋人への愛が、人間の愛の三角形をかたちづくっているそうです。どうやら、彼にとっては、お母さんがいちばん大切な人のようです。
 
 
 最後にホテルの前で別れるとき、彼はこう言いました。「うーむ。愛が大切だっていうのには、俺も賛成だ。人間は、愛がなければ何もできない。愛には力がある……。」カフェでの会話はかなりのカオスになってしまいましたが、とても印象ぶかい一夜でした。