イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

「日本ホワイト化」の二本の柱   ー働くことの未来形にむけて

 
 「もっとゆったりと仕事をしたい!」自由な言論の活動によって、日本のホワイト化は進んでゆくはずです。それでは、具体的に言って、このプロセスをどのように進めてゆけるのでしょうか?今回の記事では、二つの方向性を考えてみることにします。
 
 
①   「私たちは働きすぎている」という言説を、社会の中にもっと浸透させてゆく
 
 
 虎の門ヒルズのカフェで話したとき、Nさんは、まりおさんと僕に、自分の働く環境の大変さについて、くわしく話してくれました。僕もアルバイトではありますが、朝8時から夜10時まで、1時間の休みをはさんだ13時間労働を、半月ちかくのあいだ休みなしで続けたことがあります……。あの時期は、大好きな哲学のことも含めて、ほとんど何も考えられなかったような気がします。いま思い返してみると、あの体験が、僕が日本人の働く環境について考えはじめるきっかけだったのかもしれません。
 
 
 「私たちは、働きすぎている。」おそらく、こうした言葉を発した場合、反論する人はあまり多くないことでしょう。けれども、この事実は、職場で口にする人がいないために、なかなか表立って問題とされることがありません。すでに論じたように、国の全体にゆきわたっている空気の力は、本当に恐ろしいものです……。
 
 
 けれども、言論の世界の状況は、近年、少しずつよくなってきています。何といっても、ブラック企業という言葉の流行によって、マスメディアのみならず、映画やマンガなどのエンターテインメントの世界でも、この話題がひんぱんに取りあつかわれるようになりました。そう考えてみると、意外なことに、事態がすこし違ったふうに見えてきます。数十年単位のスパンで見てみるならば、日本ホワイト化のプロセスが、以前とは比べものにならないスピードで進んでいるといえそうです!
 
 
 現在進みつつある、このホワイト化のプロセスをさらに加速してゆくためには、できるだけ多くの人が、とにかく発言して、発言して、発言しつづけることが大切であるように思います。スマートフォンiPadを使って、これまで溜めこんできた爆発寸前のエネルギーを、言論の世界で炸裂させてみるのはどうでしょうか?
 
 
 かりに、全国民がこれまで心のなかで押さえつけてきた、「うあぁ、なんでこんなにたくさん働かなきゃいけないんだあぁ!」という魂のメッセージが、インターネット上で一気に解放されるとしてみましょう。その時には、一体どのようなことが起きるでしょうか?
 
 
 フェイスブックTwitter、ブログ、YouTube、ニュースアプリetc。おそらく、あらゆる領域が、無数の阿鼻叫喚の叫びによって埋めつくされるのではないかと思われます……。あまりにも恐ろしすぎて、僕にはこれ以上のことを想像してみる勇気はありませんが、見るもすさまじい状況になることはまず間違いないでしょう。
 
 
 もちろん、この例は現実的なものではないにしても、私たちがそれだけの膨大なポテンシャル・エネルギーを持っているということは、思い出しておいてもいいかもしれません。インターネット上の言論の世界は、今後もますますヒートアップしてゆくことでしょう。少しずつではあれ、そのことで、国全体の雰囲気がこれまで以上に変わってゆくことが期待できます。
 
 
 
日本ホワイト化プロジェクト 虎ノ門ヒルズ 自由な言論空間
 
 
 
 
②  新しい働き方のヴィジョンを発信してゆく
 
 
 そもそも「日本ホワイト化プロジェクト」は、ただ単に怠けて生きてゆきたいという気持ちから提案されたものではありません(本当です!)。むしろ、このプロジェクトが目指しているのは、私たちが喜びを感じながら働けるような社会の未来です。
 
 
 働くことには、必ずどこかで厳しさの次元がつきまといますが、その一方で、働くことは、生きることの喜びを与えてくれもします。コーヒーを飲みながら、まりおさんはNさんと僕に、自分が仕事のなかでこれから実現してゆきたいことについて、熱意をこめて語ってくれました。まりおさんは、現在の自分の仕事にたいして、大きなやりがいを感じていました。「私たちは働きすぎている」という言説とともに必要になってくるのは、「私たちはこのように働きたい!」という未来のヴィジョンなのではないでしょうか。
 
 
 言うまでもなく、こうしたヴィジョンは、職種ごとに、また人ごとに違ったものになるでしょう。「少しくらいきつい環境でもいいから、好きな仕事がしたい」という人もいるでしょうし、「ゆったりと仕事をしながら、仕事以外の人生を楽しみたい」という人も多くいることと思います。ここでは、それぞれの人が自分自身の人生に合わせてヴィジョンを育てることができそうです。
 
 
 こうしたヴィジョンは、自分の心の中にしまっておくこともできますが、それを発信することによって、この社会の雰囲気を変えてゆくこともできるのではないでしょうか。「喜びを感じながら働きたい」という人の数が増えてゆくならば、この国の全体で、働くことにたいする捉えかたが変わってくることにもなる。この点についても、すでにインターネットの世界で多くの人が発信を始めています。働くこと自体にかんする考え方も、近年になって急速に変わりつつあるということなのでしょう。
 
 
 こちらの②の方は、①に比べて、すこし敷居が高いような気もしますが、一度考えはじめると、なんだかウキウキしてきます。①が進むなら②について考えてみる余裕も生まれるし、②が進むならば、①の方についてもますます発言しやすい環境が生まれてくる。日本ホワイト化のプロセスは、①と②が密接に絡みあいながら進行することになるでしょう。
 
 
(つづく)
 
 
 
 
 
 
 
 
[以下の記事は、僕が読ませていただいている但木一真さん(id:ktadaki)のものです。②の論点の参考のためにリンクを貼らせていただくことにしますが、この方のライフスタイルは、なんだかとても輝いているように見えます……!]