イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

あなたをめぐる形而上学

出会うことと喪うこと

論点: 近さの関係を築くことのできる相手とは、人生の中でも限られた数しか出会うことができない。 会う時刻と場所、言葉や行動といったさまざまな点において、近さの関係のうちにあるあなたとわたしが過ごす時間は、習慣の次元と深く結びついている。近し…

二人でいることの病い

次の論点に進む前に、一点付け加えておきたいことがある。 論点: 哲学の営みは、公共世界からの遠ざかりと共にしかなされえないのではないだろうか。 公共世界では政治・経済・社会などといったさまざまな領域について、常に多くのことが論じられている。し…

公共世界と近さの概念

探求の出発点: わたしが本当の意味で多くを知ることができるのは、わたしが深く関わることになる他者だけである。 学校や職場などといった公共世界のうちでは、人間は、自分自身の実存を多かれ少なかれ特定の様態へと切り詰めるのでなければ生きてゆくこと…

他者の問題圏へ

今回の探求の主題は、次のものである。 問い: わたしは他者について、何を知りうるか?そして、その他者といかにして関わるべきか? このような問いを立てることの背景には、主に言って二つの動機がある。まず最初に、前回の探求からの続きとして、「わたし…