イデアの昼と夜

東京大学で哲学を学んだのち、ブログを書いています。

エクリチュールの宛て先

 
 「重要なことはアクセスではなく、むしろ……。」
 

 今から思えば、ブログを書き始めた最初の頃は、とにかく人から拒絶されることを恐れていたのである。
 

 書いた後にすぐに誰かからの反応が来るメディアというのは、怖い。自由に書いたものを発表できる時代になったとはいえ、その分むしろ、人の反応を気にしてしまうという弊害は増大しているのではないだろうか。
 

 僕には、その怖さを乗り越えるだけの勇気がなかった。ただ、書きまくって気がついてみたら、前よりも人の目を気にしなくなっていただけのことである。
 

 ていうか、こんなことになるなら最初からこんな感じで独白していればよかったような気もするが、そんな勇気はなかったのである。
 

 今は、アクセスが気にならなくなったというよりも、むしろ、たぶん自分が書きたいものを書いても、多分どうやってもアクセスは上がらないであろうという事実を次第に深く受け入れるようになったのである。メガアクセスとは、あくまでも縁のない人生なのである。
 
 
 
 ブログ メディア アクセス 共感者
 
 
 
 だが、しかしである。究極的には十万のアクセスではなく、一人の熱烈なる共感者をこそ求めるべきではないのか。
 

 いやもう、この世に読むものとかありません、と思いきや、これはどういうことだ、なぜこの世のこんな片隅に、真実としか言いようのない何かを書き続けてる奴がいるのだ、いやこりゃもう文学でしょ、でもこりゃアクセス来ないわ、来るわけねえ、ましてや売れる要素なんてあるわけもねえ、だってこの人の書いてるもんには、マジで引くくらい微塵も混ぜものが入ってないもの……。
 

 そういうまだ見ぬ密やかな心の友に向けて書くのが、真の文学ではないのか。いや、ごめん、なんか壮大に間違ってるような気もする。合ってるか間違ってるのか、全然わからんが、そしてなんかしごく順当に間違ってるような気もするのだが、しばらくはこのまま、自分でもよく分からんものを書き続けるしかない……。